2014年5月10日土曜日

オルガネット奏者Christophe deslignesさんをお招きして。

風の強い日の午後、即興の達人が家を訪ねた。

Christophe deslignes。
彼は数少ないオルガネット奏者の中でも、Pedro Memelsdorff や、 Kees Boekeなど、有名な中世音楽家たちと演奏をしている。その独特な個性的な即興は、現代曲でも中世の曲でもない、
ジャンルを超えたものだ。

そもそも、なぜ家に来たわけは、来週ある演奏会をドレスデンで行うため、私の旦那は、まだあったこともなかったのだが、連絡をして、ハレに一足先にきてもらうことになった。

黒のシルクハットの下に毛むくじゃらの髭がのぞき、黒い落ち着いた目で流暢なドイツ語を話してくれた。生まれはパリ。だが、母親はドイツ人らしい。

わたしたちは食事を済ませたのち、早速一緒に、トレッチェント音楽を奏でた。RossiのOrquaや、ランディーニを演奏した。圧巻!!

彼のオルガネットは彼の片腕となり、20年になるという。なるほど、よく使い古した道具、彼自身の息吹が音となって現れるようだ、と思った。

鍵盤は、少しすりへって、各鍵盤が個性を持っている感じがした。オルガネットは、オルガンの領域を超えた、吹管楽器との両立を果たした、まさに、”風を操る”道具だと思う。私は、そこに魅力を感じた。

クリストフさんは当時、バーゼルのスコラで勉強をし、ある日オルガネットを楽器室で見つけたころの感動を話してくれた。
「膝に乗せて、楽器を弾いた時、まさにこれだと思った」そうだ。彼は小さいころから自由に即興するのが好きだった。ピアノを勉強し、自分の即興スタイルに合う楽器を見つけるのに苦心していたその矢先だったそうだ。
私も、ガンバに出会ったころの気持ちを、ふと思い出した。




左は旦那の。右はクリストフ。

その日の夜、突然の友人からの電話。一緒に自宅で映画をみることに。

週末の長い夜が始まった・・・。
そのおかげで、クリストフさんの色んなお話しを深く聴くことができた。
彼の夢は、彼自身のマニュスクリプトを完成させることらしい。しかも、手書き譜で中世のようだけれど、まったく同じではなく。ジャンルは古代から中世、そして現代音楽だそうだ。
彼は、言語にも興味があるらしい、彼の住む、パリから西側に離れた田舎は、まだケルトが残っているらしい。彼曰く、フランスという国は存在しない。なぜなら、いまだに古い民俗が残り、昔のことばを話しているところが残っているから。とのこと。方言もその一つ。日本でも、祖父母のころにくらべ、方言が失われてきている。それはある意味文化を失う危険なことなのかもしれない。


そしてホームコンサート当日。
ボカッチオの”デカメロン”の朗読とともに、トレッチェント音楽を演奏した。
曲目は、

Or qua, conpagni Caccia (Codex Rossi)
Per seguir la sepranca Ballata, (Landini)
Ochi dolenti miei Ballata (Landini)
L'alma mia piange Ballata (Landini)
Aquila altera Madrigal (Codex Jacopo)
Estanpie Royal (即興)
O Crudel donna Madrigal (Codex Rossi)
Lucente stella Ballata (Codex Rossi)
Istampitta (即興)
Isabella Istanpitta (Codex Londo)

その2台によるオルガネットの響きは、宇宙の息吹のように空気を揺るがした。
それは、風をおこし、雨をふらす雨ごい師のようでもあった。
彼は、即興は、”その時にならなければ、何を演奏するかわからない”と話した。
その時、インドのヴィーナ奏者の話、“音の神秘”の本の中にでてくる、
「東洋の歌い手は、うたいだすまで何を歌うか自分でもわかりません。
時と場の雰囲気をかんじとって心に浮かびあがってくるものをうたい奏でるのです。」
というのを思いだした。
彼らの即興はそれぞれスタイルのちがうものではあったけれど、
二人ともすごい。と、ただ、ため息をつくばかりだった。



最後の写真は、オルガネットルテ♡
実は、5月9日は旦那の誕生日で、少しお祝い。

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